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白井てり
Women's health artist
大阪在住。学生時代にヨーロッパ製ランジェリーの魅力に目覚めたことがきっかけで、レースの最高峰「リバーレース」に心を奪われ、20代の一時期はレースの生産現場レースメーカーに身を置いていたことも。

長年心を惹きつけてやまないレースという素材をモチーフに、学術的根拠と「かわいい」が融合した世界で、「からだ」への気づきを促し、行動変容を生み出すひとつのきっかけを提案したいと願う。

西宮・苦楽園ホームドクターのような下着店「アッシュ・イヴ」

目次

ホームドクターのような下着店
ファンデーションクリニック「アッシュ・イヴ」店長 金岡尚美さん

白井:久しぶりにお店に来た気がします。いつも変わらぬ落ち着いた雰囲気が心地良いですね、今日はよろしくお願いします。

金岡:本当に久しぶりですね。年始以来でしょうか?今日はお話できることを楽しみにしていました。

白井:ふふ、私もです。だけど、今日はイチから改めて伺いますね。
まずは「アッシュ・イヴ」というお店について聞かせてください。今年で創業46年を迎えられたそうですね。

金岡:はい、ここは、1974年にオープンした西宮・苦楽園の輸入下着専門店です。一人でも多くの方に立体裁断されたインポート下着の着け心地のよさを知ってほしい……。という思いでオーナーが創業しました。

白井:お店には「ランジェリーショップ」ではなく、「ファンデーションクリニック」と書いてありますね。

金岡:ええ、この名前にはホームドクターのように下着のことは何でも安心して相談できるお店であること、 フィッティングを重視しお客様との信頼関係を大切にしたい、という願いが込められています。

白井:一生お付き合いできる下着専門店というわけですね。女性は子どもをもつ・もたないなどのライフイベントに目が行きがちですが、それぞれの選択の結果にさまざまライフコースが描かれます。
時が巡っても変わらずお店があるのはとても心強いですね。
ところで、いつでも「今のわたし」を迎えてくださる金岡さんがこのお仕事をはじめたきっかけを教えいただけますか?
※ライフコース:個人の一生を家族経歴、職業経歴、居住経歴などの様々な経歴の束として捉えたもの

金岡:実は下着が好きで働き始めたわけでないんです。自分の体型にコンプレックスがありましたし…。「アッシュ・イヴ」はインポートアクセサリーのお店と予約制の下着のお店、2つの顔があるんですが、アクセサリー部門の求人募集を見て下着のお店もあることをその時、知りました。

白井:なるほど、アクセサリー店は予約なしで気軽にお買い物を楽しめるんですね。

金岡:はい、人と接するのが好きでしたし働くなら自分のプラスになること、キレイになれるところがいいなと思ったのがきっかけです。
その時は、もちろん下着が女性に心身ともに与える影響をまったく理解できていませんでした。

白井:それはいつ頃のことでしょうか?

金岡:26年前、1994年11月末に働き出しました。バブル景気は終わっていましたが、10人以上スタッフが在籍していました。
当時はインポートと国産の下着デザインの差が大きくて、素敵な下着を求めて来る人がとても多かったため、営業時間内は1人30分間のフィッティングがフル回転。輸入商品独特の商形態として次シーズン6ヶ月分のオーダーをしますので、ストック量の嵩高さもすごいものでした。

白井:わたしはその頃は学生で、お店が気になりながらも予約する勇気がなくて、ふらり立ち寄ったら皆さん忙しそうだったことを覚えています。

金岡:ところが、年明けて1月に阪神大震災が起こり、電車も不通でお店に来れなくなりました。なんとか出勤しても、帰りの電車がよく途中で止まり、なかなか家に帰れず仕事を続けられるのだろうかと思うこともありました。
けれど、「こんなときだからこそ気持ちのいい下着をつけたい」というお客様の笑顔に元気をいただきましたね。バスを乗り継ぎ、たくさん歩くなど通勤経路を工夫していたことがついこの間のようです。

白井:あれは関西に生まれ育った者としては、忘れられない経験ですよね。
自然災害ではないものの、今年はCOVID-19(新型コロナウイルス)による緊急事態宣言が出るなどこれまでに経験のない半年間だったと思います。
お店ではどのような変化がありましたか?

金岡:家にいる時間が増えて家族で対話する人が増えているのか、「お母さんに聞いて」と来店される若いお嬢さんが増えてきました。

白井:もともと、3世代で通うお客様も多いとおっしゃっていましたね。世代を越えたいい広がりを感じます。

金岡:他には、「外出しなくなったから下着ぐらいはちゃんとつけておきたい」というニーズでしょうか。
家にいるとブラジャーは必要ではないと考える方も増えるかなと思ったのですが
皆さん外出にはこだわらず、ご自身の体にきちんと合ったものを着けておきたいと感じておられるようです。

白井:下着は精神的な健康のバロメーターというわけですね。
健康といえば、今や11人に1人が罹患するという乳がんの術後下着のアドバイスもされていますね。

金岡:はい、ドイツのAnitaというブランドをおすすめしています。お客様の中には「乳がんになって、人生ではじめて下着をフィッティングした」「はじめて下着の大事さ、楽しさを知った」という方もいらっしゃいますよ。

白井:興味深いですね、「病で体が欠けることがあっても、知ることで得たものがある」という考え方でしょうか。当事者しかわかりえない感情に真摯に寄り添っておられる様子が伝わってきます。

金岡:とはいえ、術後すぐ来られる人ばかりではなく長く時間がかかる人もいます。感情の整理や、傷口を見せることに抵抗があるという気持ちは人それぞれですよね。
思い切って来店されたお客様がウキウキして帰るお顔を見ると嬉しくなります。
できることなら悩んでる時間は少なく、楽しい時間を多く過ごすほうがいいと思うので、下着でなくともまずはランチやお茶など気分転換に外出することから始めるのもいいかもしれません。

白井:お取り扱いの「Anita(アニタ)」はどんなブランドですか?

金岡:1886年創業のブランドです。実は乳がんに限定せず、体がしんどい人にもおすすめしています。どこが、どのように?と聞かれると難しいのですが細部にわたり「とにかくよく考えて作られている」と感じます。身に着けた人はいろいろ悩んで行き着いて、「あ!やっと見つけた!」みたいなお顔をされますよ。

白井:乳がん用というわけではないのですね。

金岡:はい、他にマタニティコレクションもあります。昔は白=清潔というイメージでしたが、最近はデザインに遊び心が出てきています。
金属を使っていないものや縫い目など肌への負担が少ないように考えられており
安心してお召しいただけます。

白井:なるほど、アッシュ・イヴさんと同じく「ホームドクターのような下着」ですね。個人に起こる事象は地続きで「妊娠」「出産」「病」という枠組みでひとくくりにすることはできませんものね。
ところで、金岡さんご自身は「女性の健康」と聞いて何を想起しますか?

金岡:いきいきしていること、女性は太陽のような存在でしょうか…。今病気でも前向きな人は前向きに過ごしていますし、必ずしもなにもないのが健康だというわけではないと思います。要は「心身ともに自分で満足できているかってこと」。
生きてたら調子も悪くなるけれど、それが不幸かと言うとそうじゃない。病気がない人なんていないんじゃないでしょうか?

白井:まさにWHOの健康の定義ですね!
※WHO憲章「「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱 の存在しないことではない。」

金岡:先程白井さんが「下着は精神的な健康のバロメーター」と表現してらっしゃいましたが、確かに下着を買うと元気になっていくんです。
いえ、元気な人、気持ちが上がってる人しか来ないということでしょうか。
「たいへんやってん」と言ってももう終わってることで、そう思わないと下着を変える気にならないんだろうなぁと感じます。

白井:下着に対する意識と自分を思う気持ちは共通するということですね。

金岡:はい、下着も自分も大事にできるのは自分だけです。今悩んでいる方も、すぐに行動を変えることができなくても、いつかわたしたちの存在を思い出してもらえると嬉しいですね。

白井:より多くの方にその想いを届けるためにこの活動も充実させていきます。変化の大きな時代ですが、ゆるやかにくぐり抜けていきましょう。
今日はありがとうございました。

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この記事を書いた人

大阪在住。学生時代にヨーロッパ製ランジェリーの魅力に目覚めたことがきっかけで、レースの最高峰「リバーレース」に心を奪われ、20代の一時期はレースメーカーに身を置いていたことも。

長年心を惹きつけてやまないレースという素材をモチーフに、学術的根拠と「かわいい」が融合した世界で、「からだ」への気づきを促し、行動変容を生み出すひとつのきっかけを提案したいと願う。

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